新たなプロジェクトを立ち上げる際には、プレゼンテーションを行い、企画を通しますよね?コンピュータシステムの導入化案件では、その工程を「要求分析」と呼んでいます。
普段から企画・提案書が飛び交う組織では、何ら目新しいことではないと思いますが、この工程で行う作業は「『要求』を『分析』する」ことです。そのまんまの意味ですが、補足すると、「『要求』とは問題点を明らかにしその効果的な解決策を提示し求めること、そして『分析』とはその求めが正しいか判断をくだすこと」です。
【前提知識】でも触れましたが、「要求」の出所は経営者や取引先、そして組織内からと様々ですし、問題点だけの提示に留まる(不完全であっても重要な)案件も含まれているかもしれません。
この工程にまでたどり着いた「要求」であればどれも、貴重で切実な願いがこめられていると思います。しかし、資源(人・予算)には限りがあり、「分析」によって分類(可否、効果、優先順位など)し、導入計画に載せる「要求」を選別すると同時に、決裁権者の判断を容易にします。
「分析」のポイント
「分析」する視点は組織によって様々かもしれませんが、「重要性」「緊急性」と「有効性」については、外せない項目として挙げられるでしょう。
「重要性」「緊急性」については、特に説明は要らないと思いますので、「有効性」についてのみ補足すると、
- コンピュータを使わなくても、業務フローを変えるだけで改善が見込めないか?
- 問題を分割して、人とコンピュータに振り分けたほうが効率的ではないか?
- コンピュータ導入が新たな問題を引き起こさないか?
等々。コンピュータによる対策が最善・適切なのか検証します。「何でもできるなら、何がなんでも全て任せる」なんて考えがちですが、コンピュータの特性を理解しピンポイントに活用することを心がけましょう。
「分析」の本質は「どれだけの利益が見込めるか試算すること」です。厳選された「要求」についてじっくりと取り組みましょう。この試算が最も困難で大きな責任を伴いますが、しっかりとした「数字」を提示しなければなりません。リターンを明確にすることが、投資への最大の判断材料です。システム導入成否の鍵になりますので、脳に汗して「数字」を算出しましょう。
要求分析書をまとめる
要求分析書は、要求分析の議事録であり、プロジェクトの指南書になります。決まった書式はありませんので、組織内に規定の書式があればそれを流用しましょう。
出来上がった要求分析書は、決裁権者の承認を経て、要望書としてシステムハウスへ提示します(予算など教えたくなければ一部抜粋でもいいでしょう)。
システムハウスの営業担当者は、要求分析書をもとにヒヤリングを行なった上で、規模の見積り・概算額を提示します。
記述しておくべき項目は最低限ありますので、簡単に説明をしておきます。
- システム(プロジェクト)名
- 先ずは名前を決めましょう。分かり易くてカッコいいのがお勧めです。
- システムの目的
- 「要求」を出す際に使われた企画書を添付します。必要に応じて、プレゼンテーションでの質疑や分析結果を反映させましょう。
- 求める効果
- 成功と呼べる結果を明確にしましょう。プロジェクト成否の判定基準は大事ですね。
- 影響範囲
- 組織再編や人事、業務フローの変更など、現状から何が変わるのか明確にしましょう。
- インフラの現状と整備計画
- コンピュータ(サーバやパソコン)やネットワーク機器など、既存のものをそのまま利用するのか、新たな投資を必要とするのかなど、インフラについての導入計画を立てます。
- マスタースケジュール(デッドライン)
- いつまでにサービスを提供したいのか、希望するデッドライン(最終期限)を明記します。
- 予算
- 予算の上限を記述します。この予算には、ハードウェアとソフトウェア、そして保守・運用費まで含めた額を含めます。
- 補足・追記
- 二次開発の予定など、何かしら注意事項があれば記しておきましょう。
「要求」を生む仕組みづくり
現場の改善意識から生まれる「要求」は、人や組織に成長をもたらす原動力に繋がります。もし「要求」を生む仕組みが無ければ、早急に作りましょう!
よく知られているものとして「QC(Quality Control)活動」があります。組織内を複数のグループに分け、現状の問題点とその解決策を各々プレゼンテーションし、グループ単位にその優劣を競う活動です。習慣化されている組織では、日頃から問題点をストックしているかもしれませんね。問題解決できる権利はモチベーションに繋がりますし、「要求」を生む最も効果的な仕組みだと思います。しかし、QC活動はそれなりの負荷が掛かります。時間を調整できる組織に限られ、営業職のようにメンバーが揃わないような職場では適さないかもしれません。
もう少し簡単に「要求」を引き出す方法として、「場」を作るところから始めてはいかがでしょう。はじめは簡素で手書きでもかまいません、提案シートと回収箱を設置しフロアの片隅にでも設置しましょう。目的・目標を明確に打ち出し、成功イメージが共有できれば受け入れられると思います。いつの間にか習慣化され、この「場」そのものをシステム化したいという「要求」が生まれることを期待しましょう。